
最終号の到着と、全16号のコンプリート
河出書房新社が、2026年の創業140周年に向けたカウントダウン企画として2022年9月に創刊した季刊誌「スピン/spin」。
その最終号となる第16号、2026年夏季号が届きました。
創刊号から購読してきたこの雑誌も、これで1号から16号まで、全号をコンプリートしたことになります。
ただ、実は途中の号から、封を開けないまま「積読本」になっています。
普段の私にとって積読はほとんどあり得ないことなのですが、なぜ「スピン/spin」を積読しているのか。その理由について、少し振り返ってみたいと思います。
「スピン/spin」との出会い
私がこの雑誌を購読し始めたきっかけは、創刊時のコンセプトに強く共感したことでした。
「スピン/spin」の命名者は作家の恩田陸さん(創刊号に恩田さんによる「創刊エッセイ」を掲載)。「日常に読書の栞を」をコンセプトに、せわしなく流れる日常に挟まり、ふと立ち止まらせる「栞=スピン」のような存在であり、日常に少しの「変化(回転=スピン)」を与える雑誌を目指します。(引用:スピンとは1)
もともと恩田陸さんのファンだったこともあり、このコンセプトに惹かれました。
「日常に読書の栞を」という言葉にも心を動かされ、まずはAmazonで創刊号を購入したのが始まりです。その後、Fujisan2にて定期購読を開始。
第1号が発売された2022年は、2020年から続くコロナ禍の中、まだマスクを外せない日々が続いていました。一方で、少しずつ遠出ができるようになるなど、制限のある生活の中にも、日常が戻りつつあった時期だったように思います。
コロナ禍で直面した「本が読めない」という状況
少し時間を遡って、2020年のことです。
新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界中の動きが止まっていた時期。私にとって大切な読書環境も、大きな影響を受けました。
図書館は長期間閉館し、本を借りることができない。書店も休業し、本屋へ行くこともできない。ネット書店も物流の影響を受け、普段どおりには利用できない。
読む本が手元からなくなるという事態に、初めて直面したのでした。
もともと私には、本を買って読まずに溜めておく「積読」という習慣はありませんでした。そのため当時は、やむを得ず家族が積読していた本の中から読むものを探すような状況でした。
五感で楽しむ「紙の本」の贅沢
そんな経験を経て出会ったのが「スピン/spin」でした。季刊で定期的に本が届き、手元にストックできることへの安心感は大きなものでした。
さらに「スピン/spin」には、毎号異なる表紙の「紙=資材」を使用し、読者に視覚と触覚でその違いを楽しんでもらうという贅沢なプロジェクトがありました。表紙を手にするたびに紙ならではの質の良さを実感し、読書とは視覚だけでなく触覚も大いに影響しているのだと深く認識させられました。表紙だけでなく、目次や各ページにも毎回工夫があって、毎回楽しい発見でした。
まさに「究極の紙本」と呼ぶにふさわしい、特別な体験を届けてくれる存在だったのです。
なぜ「スピン/spin」を積読しているのか
コロナ禍の大変な記憶は、今も完全に消えたわけではありません。
それでも現在は、自由に本を購入し、読むことができる環境に戻っています。私も再び、活字に囲まれた日々を過ごしています。
読む本が途切れなくなったため、いつしか「スピン/spin」は途中の号から封を開けないまま、積読本になっていきました。
本来、積読というスタイルは私にはあり得ません。
けれど、「スピン/spin」だけは少し事情が違います。再び本が手に入りにくい状況になったときに備える、いわば「保険本」のような存在として、手元に置いているのです。
もちろん、毎号厳選された貴重な紙を、できるだけきれいな状態で保っておきたいという気持ちもあります。(そして、Fujisanから届く黒いビニール袋も保存状態を保つ一助になっていると思っています。)
読まずに保管していることを考えると、少し不思議な気もします。しかし、そこにあるだけで安心できる本があってもよいのではないかと。

これからも紙の本を
電子書籍の便利さも理解しています。
けれど、紙の本を手に取り、表紙に触れ、ページをめくる。その一連の動作を含めて本を楽しむ時間は、電子書籍では得られないものです。
電子書籍派の方には理解しにくい感覚かもしれませんが、私はやはり、これからも紙の本を選び続けるのだと思います。
全16号がそろった「スピン/spin」。
読み終えるためだけではなく、紙の本の魅力を感じるために、そして、いつか必要になるかもしれない「積読本」として、これからも大切に保管しておきたいと思います。
- スピンについて:日常に「読書」の「栞」を 雑誌SPIN/スピン|河出書房新社 ↩︎
- 日本最大級の雑誌サイトFujisan.co.jp ↩︎
